わかりやすい安全保障・軍事入門

ニュースなどで聞くけど難しいと感じる軍事や防衛、安全保障などについて入門者向けにわかりやすく解説していきます。たまに軍事のマニアックなネタや軍事に関する歴史なども解説。

「海軍」と「海兵隊」の違いは何なのか?

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在日アメリカ軍の基地問題などのニュースの話題では、アメリカ「海軍」とアメリカ「海兵隊」がよく出てくると思います。

どちらも「海」が付くわけですが、両方ともアメリカ軍の中にある全くの別組織です。「海軍」の中に「海兵隊」という部門があったり、「海兵隊」という「海軍」の別称なのでは?と誤解している方も多いと思います。

 

今回は「海軍」と「海兵隊」の両者の違いとは何か?ということを解説します。

海兵隊」とは?

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海兵隊とは、船(艦船)で敵地に輸送されて、沿岸などから敵地に上陸することを専門とする軍事組織のことです。

軍隊は陸軍、海軍、空軍の3軍を主な構成としますが、それとは別に4番目に当たる「海兵隊」という独立した軍事組織があります。

海兵隊を保有している国は限られており、国によっては海兵隊の任務内容は微妙に違ったりもします。

 

また国によっては海兵隊を保有していないものの、陸軍や海軍の一部門の中に、海兵隊のような沿岸から敵地に上陸する部隊があったりします。

なら海軍は何をやっている組織なのか?

海軍は多くの人がイメージしているような戦闘艦(艦艇)などで海上で戦う軍隊のことです。そのための艦艇を操ったり、艦艇から砲弾を撃ち込んだり、ミサイルを発射したりなどをやる軍隊のことです。

海兵隊とはどういう時に送られるのか?

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海兵隊とは戦場に一番最初に送られる軍隊でもあります。

海を越えての外征作戦を主な任務とします。海上から小型ボートや水陸両用車などで輸送されて、敵地に上陸などを行います。そのため、アメリカ海兵隊は通称「殴り込み部隊」とも呼ばれています。

 

海兵隊は上陸を行うための歩兵だけでなく、上陸などを行う際に航空戦なども行うため、戦闘機などの航空機も保有しています。

また上陸の際は、何も沿岸だけでなく、空からのパラシュート降下なども行う場合もあるため、輸送機なども保有しています。

 

海兵隊」は有事の際は、真っ先に先陣を切って敵地に乗り込むため、海兵隊員の多くは優秀な精鋭でもあります。

海兵隊」ができた経緯は?

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出典:7 Things You May Not Know About the U.S. Marine Corps - History Lists

海軍は艦船に大砲などをつけて水上艦同士で砲撃戦が行うことが主な任務でした。

しかし、他国を攻撃するには、艦船で敵の陸地に上陸して陸上戦を行わなければならないことになりました。この頃は飛行機がないため、兵士を敵の領土に輸送する手段は船しかありませんでした。

 

いくら軍隊といえども、普段は海で戦うことを専門としている軍隊であり、陸上で戦う能力は海軍にはありませんでした。上陸後には、自軍陣地を構築したり、敵地に進軍したりなどを行わなければけません。

そこで艦船で輸送してもらい、敵地に上陸することを専門とする部隊を多くの国が持ち始めます。これが後の海兵隊の始まりです。当時の海兵隊は、陸軍や海軍の一部門であったりします。

 

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出典:ガリポリの戦い - Wikipedia

しかし、船がまだ帆船の時代は、船団がまとまっての行動ができないため、敵地への上陸の際には敵兵力のいないところに上陸し、部隊を集合させてから進軍しなければいけませんでした。

19世紀後半になり、動力船が発達すると艦船が自在に運動できるようになり、敵前への強襲上陸が行えるようになります。

第一世界大戦では連合国軍がオスマン帝国ガリポリ半島に強襲上陸作戦(ガリポリの戦い)を行ったものの、装備や戦術が未熟だったため、作戦を失敗に終わっています。

その後、アメリカや日本でその戦訓が研究され、1920年代に水陸両用作戦の概念が生まれ、この戦訓が第二次世界大戦などにも活かされ海兵隊の戦術が徐々に発達していきます。

陸軍や海軍の中にある「海兵隊」の名称がつく部隊

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出典:海兵隊 - Wikipedia

海軍とは別に海兵隊を独自に持つ国は限られています。一番の規模を持ち、最も有名なのはアメリカ海兵隊です。

海兵隊を独自に保有する国は、アメリカと韓国だけです。しかし、海軍や陸軍の属して「海兵隊」と名称が付く部隊を持つ国の軍隊は多くあります。

イギリス(海軍)、フランス(陸軍)、ロシア(海軍)、オランダ(海軍)、台湾(海軍)がそれにあたります。

日本にも「海兵隊」はあるのか?

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出典:水陸機動団 - Wikipedia

自衛隊専守防衛という任務の性格上から、敵地へと上陸する海兵隊を今まで保有していませんでした。

しかし、冷戦構造崩壊後の中国の軍事力拡大により、尖閣諸島などの離島防衛の問題が徐々に上がってくるようになりました。

そこで2002年に「自衛隊海兵隊」とも呼ばれる「西部方面普通科連隊」が陸上自衛隊に創設されました。

優秀な隊員を多く集めた精鋭部隊であり、主な任務は敵に奪われた離島に隠密で上陸しての偵察活動、陣地構築の妨害、情報収集や他の上陸する部隊の誘導などを行います。

自衛隊海兵隊」であるものの、任務の性格上はアメリカ海兵隊武装偵察部隊(フォース・リーコン)に近いと言われています。

 

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出典:水陸機動団 - Wikipedia

その後の2013年には「水陸機動団」が陸上自衛隊に新たに編成されることが発表されました。規模は3000人もの大規模になる予定で、今までの「西部方面普通科連隊」が水陸機動団の第一連隊に組み込まれる予定です。

2018年には編成を完結させる予定であり、従来とは違って水陸両用車やオスプレイを使っての作戦を行うことを前提としています。

 

 

 

 

海軍は艦船で船や飛行機を相手に戦う軍隊、海兵隊は艦船や航空機で輸送されて上陸を行う軍隊と考えればわかりやすいと思います。

独自に海兵隊を持つ国は限られているものの、ほとんどの国は上陸を専門とする部隊を保有しており、「海兵隊」という名称を付けていたりします。

ちなみに日本のアメリカ軍基地のほとんどは、アメリカ海兵隊でもあります。

 

参考資料

matome.naver.jp

note.chiebukuro.yahoo.co.jp