「特殊部隊」とは何か?「特殊部隊」の持つ他とは違う能力とは
よくハリウッド映画やドラマなどで、「特殊部隊」という言葉を聞くと思います。
映画などを観てると、「特殊部隊」は何か凄そうな任務をやる部隊?暗殺とかをやる部隊?というイメージがあると思います。
今回は特殊部隊とは何をするための部隊なのか?そして、特殊部隊が作られてきた経緯などを少し紹介していきます。
特殊部隊って何?
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/Navy_SEALs
「特殊部隊」とは、名前の通りに特別な任務に行うための部隊です。特殊な任務とは何か?例えば、以下のような状況が起きたとします。
- テロリストのリーダーが潜伏している場所が発見された
- 人質をとった武装勢力が身代金の要求などをしてくる
- 敵基地には危険な兵器があるかもしれない
こういったことが情報でわかり、いざ対処をしようとしても一般の兵士達では対処がとても難しい場合があります。
なぜなら、敵に目立たないように少数で行動したり、敵にバレないように敵の基地や陣地にこっそりとパラシュートや水中から潜入したり、更には少数で単独で行動しているため食糧や弾などの補給も受けられない状態が長く続くなどの任務を行うのには、一般の兵士達(一般の部隊)では、とても難しく荷が重いからです。
こういった「特殊なケース」が起きた場合に対処するため、特別な技能と装備を持ち、特別な訓練を受けたのが「特殊部隊」です。
平時でも動くかもしれない特殊部隊
特殊部隊は場合によっては、国が戦争をしていない状態である平時でも要請がかかることもあります。
それは、要人の暗殺や誘拐といった汚い仕事であったり、国外への人質救出や敵地へ潜入しての情報を収集だったりと公には公開できないような任務を行います。
そのため特殊部隊の活動内容や詳細、訓練内容や隊員の素性などは普通は秘密であまり公開されないのが普通であったりします。
「特殊部隊」は具体的に何を行うのか?
出典:http://www.huffingtonpost.com/2013/05/02/navy-seals-photos_n_3204276.html
特殊部隊は具体的にどういったことを行うのか?それは「特殊部隊」といっても、それぞれの部隊によって想定している任務が違うため、全ての「特殊部隊」が「全ての特殊なケース」に同じように対応できるわけではありません。
それぞれによって得意不得意の分野があり、特殊部隊によって専門性があります。
「特殊部隊」が行う「特殊作戦」には、主に以下のようなものがあります。
偵察(諜報活動)
「偵察」とは敵地に潜入し、敵の情報を集めることです。
具体的には敵のいる所(基地など)の地形の情報を集めたり、敵の人数や敵の基地にある兵器に関する情報を集めたり、人質を救出するための情報を集めたりなど様々です。
ゲリラ戦(後方錯乱)
簡単に言えば「奇襲」作戦のことです。
本来の「ゲリラ戦」という言葉は、劣勢な非正規軍(テロリストなどの武装勢力)が、大規模な正規の軍隊に対して、横や後方から奇襲することをいいます。
これらを正規軍の特殊部隊が行うことによって、敵に損害を与えて補給路を断ったり、敵が集中的に攻撃する前に姿を消して混乱させたりすることができます。
対ゲリラ戦
上記のゲリラ戦に対処することを指します。
敵のゲリラ戦に対抗するためには、主にその周辺に住む人間(民間人)などから情報を得たりすることから始まります。そのためには、その周辺に住む民間人との交流などにより、友好的な関係を結んだりをしなければいけません。
これで得た情報を元に、敵のゲリラ部隊の構成員、敵のゲリラの位置や地形を知り、敵のゲリラ部隊を発見や追跡をすることによって、敵ゲリラ部隊に強襲や伏撃などを行います。
破壊工作
名前の通り、少数で潜入して敵の重要拠点を破壊することです。
敵基地にある兵器類を破壊したり、敵の補給路を絶つために橋などの交通網を破壊したり、兵器の生産工場を破壊したりなど様々です。
人質奪還
名前の通り人質を救出することです。その方法には、敵地に変装して潜り込んで人質の情報を集めたり、秘密裏に人質に脱出できるルートを教えたり、敵地を強襲や奇襲などをして人質を救出したりなど様々です。
要人暗殺
名前の通り、敵の重要人物を暗殺することです。
敵のいる重要人物がいる建物などの施設に潜入し、射殺やナイフなどで殺傷したりなど、方法は様々です。
革命・反乱支援
敵対している地域や国などに潜入し、現政権や国家など不満を持っている反乱分子の人間を作ったり、それらを支援するためのプロパガンダ工作などを行うことです。
これを行うことにより、敵対している国を混乱させたりなどの狙いがあります。
「軍隊系」と「警察系」の特殊部隊の違い
特殊部隊は各国によって任務内容などは違うものの、大きく分けて軍隊系と警察系の2つに分かれます。
軍隊系特殊部隊は国益を第一としており、出動がかかった際は任務達成を第一とします。
それは任務達成のためなら、仲間の隊員や人質の損害出ることを想定したり、殺害をしてでも敵を無力化させたりすることを前提としています。
そして主な活動場所が国外であり、国外の基地からの人質救出や破壊工作、潜入しての偵察なつどを主な任務とします。
それに対し警察系の特殊部隊は、治安維持活動が主な目的であり、一般の警察官では対応できないような強力な武器を持った犯人への対処や、国内のテロや人質事件を対象としています。
また、できる限りは敵の射殺ではなく逮捕(拘束)を第一としています。
特殊部隊が生まれた経緯
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E6%AE%8A%E7%A9%BA%E6%8C%BA%E9%83%A8%E9%9A%8A
現代の特殊部隊は第二次世界大戦時のイギリス軍で創設された「ブリティッシュ・コマンドス」と「SAS(Special Air Service)」が最初だとされています。
当時、ドイツ軍に連敗続きであったイギリス軍は、戦車や航空機といった大型の兵器類を徐々に失っていきます。
正面からでは強力で多くの大型兵器類を持つドイツ軍にはイギリス軍は圧倒的に不利であり、イギリス軍は劣勢に立たされていきます。
そこで小型の携帯火器を持つ少数の部隊による奇襲作戦や破壊工作を思いつき、それを行うための部隊を創設します。
ドイツ軍に対して後方からの奇襲や爆破工作により、特殊部隊を使った小規模な戦いは徐々に戦果を挙げていきます。
第二次世界大戦後に解散したものの、世界各地での植民地独立戦争、IRAのテロ活動により、再度編成されます。
「駐英イラン大使館占拠事件」では突入作戦を成功させ、後のフォークランド紛争でも有効な戦果を挙げ、「SAS」は高い評価を得る特殊部隊の一つになります。
この頃、世界各地で航空機のハイジャック事件やテロ事件が徐々に増えたことで、それらに対処するために、世界中で特殊部隊が重要なものだと認識し、各国で特殊部隊が創設されていきました。
「特殊部隊」の隊員に必要な資質と能力
一般の部隊と行う任務が違う困難な任務をこなすためには、それに耐えうるだけの体力や知能、精神力などが求められます。
他にも一般の兵士が持たない技能などを習得しなけばいけません。
特殊部隊員になるための資質
出典:http://ashotofadrenaline.net/wp-content/uploads/2012/07/Picture-74.png
特殊部隊に入隊するための選抜では、一般の兵士を上回る体力や知性・判断力などが求められますが、選抜試験を受ける兵士の多くは、これらの選抜段階では多くの隊員がクリアしてしまいます。
しかし、それ以上に必要なのはいかなる不利な局面に遭遇しても任務を遂行させようとする「精神力」が求められます。
そのため選抜試験の中には、体力などを危機敵状況にまで追い込む、長時間の精神的なストレスを与える、過酷な状況に置いて食糧を長期間与えない、それらに耐えられるだけの「精神力」があるかどうかを見極めたりします。
最終的に特殊部隊員になれるのはごくわずかであり、選抜試験を受けた多くが脱落してしまいます。
特殊部隊の持つ能力
特殊部隊には一般部隊の人間とは違い、多岐に渡る特殊な技能を持たなければいけません。主に以下のようなものがあります。
空挺降下(パラシュート降下)
文字通りに空からパラシュートやグライダーなどを使って、敵の基地付近や敵の背後などに降下することです。多くの特殊部隊が持っている能力です。
潜水能力
水を身体に沈め、泳いだり潜ったりする能力のことです。敵地が海や川などに囲まれている場合、水場に潜ることで敵に発見されにくく、そこから敵に潜入したりなどを行います。
生存自活能力
いわゆるサバイバル能力のことです。
特殊部隊は少数のチームを組んで単独で移動するため、食糧や弾薬などの補給を受けられません。
そのためジャングルなどの森林で、水を得たりするための知識、蛇や蛙、魚介類などを自分で採取し、自ら調理して食糧を得るための知識が必要です。
他にも熱地帯や雪原などの過酷な自然条件で生き残るための知識やノウハウ、長期間の睡眠をしないで活動をできる能力なども指します。
徒手格闘能力(ナイフ術も含む)
出典:http://images01.military.com/media/military-fitness/marines-martial-arts-training.jpg
軍隊では銃器以外にも格闘やナイフなどの近距離での戦闘の訓練もします。
特に特殊部隊では、敵との距離が物凄く近い場合や、単独での行動から弾薬にも限りがあるため、敵を効率良く殺傷するための技術が必要になります。
そのためのナイフでの戦い方や、敵の武器を奪うための技術、素手での敵を拘束や無力化させるための技術が求められます。
爆破物に関する知識
出典:http://securityassistance.org/sites/default/files/arms%20trafficking.jpg
敵地に潜入した場合に、敵の重要施設などの破壊のために、爆弾などを扱ったりします。そのため、爆弾の設置や起爆方法などの扱い方、効率よく破壊するための知識といったことなどが必要になります。
ロープワーク・ロッククライミング技術
岩壁などを登ったり降りたりするためのロッククライミングの技術や、ヘリコプターや屋上などからロープを使って降りたり、建物に突入するためのロープワーク技術などを指します。
野外衛生
出典:https://cms.montgomerycollege.edu/EDU/Department.aspx?id=50183
敵地で負傷した場合、衛生兵などはいないため、自分で治療を行わなければいけません。
最低限の出血を止める方法や心肺蘇生方法などが必要です。
通信技術
出典:http://archive.defense.gov/photoessays/PhotoEssaySS.aspx?ID=1820
敵地などに潜入した場合、そこで得た情報などを味方に伝えるためにも、高度な無線機などを扱うための知識が必要になります。
パルチザン
出典:http://www.geocities.jp/institute_of_rhodesian_army/tactics.html
敵の勢力圏内にいる敵兵士、民間人などに金銭や食糧などを使って作戦を遂行するための協力者を得るための知識などを指します。
このように特殊部隊には体力や精神力の他にも、作戦を遂行するための上記のような技能が必要になります。それぞれの特殊部隊によっては上記以外の能力を持っていたりもします。
自衛隊の特別警備隊(SBU)を創設した一人であり、先任小隊長を務めた伊藤祐靖氏は特殊部隊員を十種競技の選手の様なものだと例えています。伊藤祐靖氏の著書「国のために死ねるか」の中に以下のように書かれています。
「特殊部隊とは隊員とは何か。私はよく、スポーツの陸上における十種競技の選手みたいなものだと喩える。
十種競技とは、一〇〇メートル、幅跳び、ハードル、高跳び、やり投げ、円盤投げ、砲丸投げ、一五〇〇メートル、棒高跳び、四〇〇メートルを一人の選手がこなし、その総合点数を競うものである。特殊部隊員は、パラシュート降下、スクーバ、山地移動、爆破、突入、これらすべてを一人でこなすことができるから、特殊作戦に臨めるのである。」
参考資料
国のために死ねるか 自衛隊「特殊部隊」創設者の思想と行動 (文春新書)
- 作者: 伊藤祐靖
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/07/21
- メディア: 新書
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