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わかりやすい安全保障・軍事入門

ニュースなどで聞くけど難しいと感じる軍事や防衛、安全保障などについて入門者向けにわかりやすく解説していきます。たまに軍事のマニアックなネタや軍事に関する歴史なども解説。

「軍事バランス(勢力均衡)」とは何か。大国に対する同盟

安全保障

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長い歴史の中で多くの戦争を経験してきた国家は、できる限り戦争を回避しようといろいろな仕組みを作っては、それを試みようとしてきました。その方法の一つとして、「勢力均衡」というものがあります。

「軍事バランス」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。安全保障関連の分野ではよく出てくる言葉です。「軍事バランス」とは名前の通り、「その周辺地域にある国々の[軍事力]の[バランス]」のことです。ある国とその近くにある国がどれだけ軍事力が同じくらいに均衡しているかという意味です。

 

今回のテーマは、この「軍事バランス」と関連する「勢力均衡」というものを説明します。

勢力均衡とは

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「勢力均衡」とは、国家間の軍事力を一定に同じにすることを言います。

ある地域に、A国とC国というものがあったとします。C国は異常に強い軍事力を持っており、小国であるA国は小さな軍事力しか保有できません。

そのため、C国はA国に対して外交で圧倒的に有利であり、もしかしたらA国を攻める野心を持っているかもしれません。A国は常にC国から侵略にさらされる危機を持っています。

そこでA国は、同じぐらいの力の小国Bと同盟を結び、C国に対して対抗します。小国同士が同盟を結びあって、大国と同じくらいの軍事力を持って対抗しようとします。

これにより、C国対して抑止力が働きます。仮にAかBどちらかの国に対して攻めたとしても、どちらか片方から必ず反撃にあうため、C国は「やめておうこうかな」と攻めようとする野心を捨てるかもしれません。

A国とB国以外の国々も、近くの脅威である大国に対抗するために、周辺の国々と同盟を結び合い、それぞれの同盟国間で牽制しあって、いずれの国も相手の国を攻撃できないようにする状況を作り、軍事力の均衡を保つようにしました。これが「勢力均衡(Balance of Power)」というものです。

 

ヨーロッパで主流だった「勢力均衡」

19世紀のヨーロッパでは、この考え方が主流に国際秩序を維持してきました。

特にイギリスは、ヨーロッパで巨大勢力の国が現れれば、「小国の独立を脅かす国は敵国」との姿勢で、たびたび干渉していきました。当時のイギリスはヨーロッパ間の軍事力の均衡を維持するためのバランサーでもありました。

イギリスがこれを積極的に行っていたのには理由があり、イギリスの国益である「貿易」の安定化のため、そして何より「勢力均衡」のためには自国の軍事力を高く持つためでもありました。今でいう世界の警察アメリカのようなことを、イギリスはヨーロッパで行っていました。

失敗に終わり、世界大戦を招いた「勢力均衡」 

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しかし、この考え方は失敗に終わり、同盟間の対立はヨーロッパ全土を巻き込む大きな戦争を招く結果となりました。

上記のAB国の同盟に、他のD国、E国、F国なども同盟に加わったとします。しかし、D,E,F国などに近い、G,H国などの周辺国家からすれば、AB同盟こそが脅威に感じます。

C国も同盟を作り、AB同盟に脅威を感じていたG国とH国も同盟に加わり、AB同盟に対抗しようとします。

お互いの同盟で、それぞれ他の国を同盟に加えていき、軍事力の均衡を保とうとします。しかし、これを行っていくと、全ての国がどちからの同盟に入ることになります。

 

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仮にAB同盟に加入しているD国が、C同盟に加入しているG国と何かしらの原因で直接対立し、D国とG国間で戦争が起きたとします。すると、AB同盟に加入している全ての国がD国を支援し、C同盟に加入している全ての国がG国を支援することになります。

これは、始まりは2ヵ国間で起きた戦争が、同盟国も参戦することにより、AB同盟 vs C同盟の大規模な戦争になってしまいます。

これと同じような小さなきっかけが、現実に「第一次世界大戦」を1914年に招きます。

 

第一次世界大戦で死亡した兵士は約9000万、負傷者数は1800万人を数えます。

各国が戦争を回避しようとした「勢力均衡」という考え方が、皮肉にも多大な犠牲を生む戦争を招いてしまいました。

第一次世界大戦後を機に、国家の上に組織・権力を設け、上からの力で国際関係を安定化させることの考えである「国際連盟が生まれることに繋がります。

また第二次世界大戦後には、「勢力均衡」から「脅威均衡」という考え方も生まれました。

 

参考資料

のび太は「勢力」ではなく「脅威」を均衡する - 海国防衛ジャーナル

勢力均衡と集団安全保障

 

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