わかりやすい安全保障・軍事入門

ニュースなどで聞くけど難しいと感じる軍事や防衛、安全保障などについて入門者向けにわかりやすく解説していきます。たまに軍事のマニアックなネタや軍事に関する歴史なども解説。

最近よく聞く「駆けつけ警護」とは何か

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安倍内閣によって15日に閣議決定された「駆けつけの警護」の新任務が、国連平和維持活動(PKO)で南スーダンに派遣される陸上自衛隊の部隊に付与されます。

ニュースなどでよく聞くこの「駆けつけ警護」とは何のことでしょうか。

これらの問題について知るには、自衛隊の国際平和維持活動(PKO)における今までの活動の歴史を少し振り返らなければいけません。今回は「駆けつけ警護」をテーマにお話します。

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駆けつけ警護とは

「駆けつけ警護」とは、国連平和維持活動(PKO)中の自衛隊が、NGO国連職員、他国軍などが暴徒などの武装集団に襲撃を受けた際に、要請を受けて、現場に自衛隊が駆けつけて救援活動をすることをいいます。その際に、武装集団に対して武器の使用が認められます。

従来、国連平和維持活動(PKO)において、自衛隊が武器の使用を許されるのは、「自己の管理下に入った者の生命、身体の防護」のみでした。つまり武器使用が許されるのは、自衛隊自身が襲撃にあった際、又はその自衛隊の管理下にある周辺の人間のみでした。

しかし、今後の国連平和維持活動(PKO)活動では「駆けつけ警護」が行えるようになったことにより、国連職員やNGOなどの非政府組織や民間人が武装組織に襲われた際に自衛隊が救援活動が行えるようになりました。

 

PKO活動で国連に認められている武器使用の条件

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国連ではPKO活動をする各国の軍に対して、武器使用には以下の二つが認めらています。

  • 「要員を防護するための武器使用」(Aタイプ)
  • 国連PKOの任務遂行に対する妨害を排除するための武器使用」(Bタイプ)

Aは軍である自分達自身が襲撃があった際に、それを防護するために武器を使用できること。

Bは武装集団や暴徒などの鎮圧、又は国連職員やNGOなどの民間団体が襲撃にあった際に武器を使用して保護を行えることです。

日本にのPKOに関する法律の「国際平和協力法」では、従来ではAタイプの武器使用のみしか認めらておらず、Bのタイプは全く認めらていませんでした。

駆けつけ警護がなかった際に起きた事件

この「駆けつけ警護」が、今まで自衛隊が行えなかった頃に、NGOなどに参加していた日本人が暴徒に被害にあう事件が起きました。

それは2002年12月の東ティモールPKOでのことです。首都ディリで大規模な暴動が発生し、現地日本人会は自衛隊に救援要請を出しました。

しかし、当時は当然「駆けつけ警護」がなく、PKO活動をする自衛隊の正式な任務には、現地の日本人や国連職員の警護はありませんでした。

そこで自衛隊側は、「人員輸送」として現地に車両を送り、国連職員やNGOなどの在留日本人17人、7ヵ国の24人の外国人の合計41人を宿営地に保護しました。

何も自衛隊PKOで救援要請を受けたのはこれだけではありませんでした。1994年の「ルワンダ難民救援派遣」の際には、11月に日本の医療NGOが車を奪われて孤立する事件が起きています。自衛隊は、同様に「人員輸送」として現場まで車両を送り、実質救出活動を行いました。

しかし、当時のマスコミは自衛隊のこの行動を批判しました。

部隊を指揮していた神本光伸氏は、後日のNHKスペシャルで「自国民を救助して批判されるのが辛かった。」と発言しています。

従来の問題点

NGO国連職員などから、緊急の救援要請があったにも関わらず、武装組織に対して武器が使えないまま救出活動をしなければいけない問題点がありました。

しかし、同様に自分達の身を守る正当防衛しか、武器の使用が認められていない自衛隊側が、過去の上記のような要請があった際に、どうやってNGO国連職員を守れば良いのか。それは彼らの盾になることでしかありませんでした。正当防衛として反撃が行えるのは、盾になり自衛隊側は自分達が攻撃を受けた際のみでした。

「駆けつけ警護」の反対派からは、「活動範囲が広がれば自衛隊側のリスクが高まる」という意見があります。

 

しかし本当のリスクとは、マトモな法整備もないまま、救援要請を断れないのにも関わらず、救出活動の際には「人間の盾になれ」と自衛隊側におわせる方がずっとリスクが高いと思われます。

 

参考資料

ironna.jp

www.kantei.go.jp

jbpress.ismedia.jp