わかりやすい安全保障・軍事入門

ニュースなどで聞くけど難しいと感じる軍事や防衛、安全保障などについて入門者向けにわかりやすく解説していきます。たまに軍事のマニアックなネタや軍事に関する歴史なども解説。

なぜ国家には軍隊が必要なのか

なぜ国家には軍隊が必要なのか

ほとんどの国には軍隊という組織を持っています。日本も軍隊という名称を名乗れないものの、自衛隊という防衛組織を持っています。日本政府は公には「自衛隊は軍隊ではない」と言うものの、外国から見れば自衛隊は日本の国防軍だと見られます。

戦争は悪いことだと言われていながら、なぜ国家は軍隊を持つ必要があるのか。今回はこれをテーマに解説していきます。

出来る限りわかりやすく説明するためにも大まかな概要だけ説明し、専門用語を省くためにも、細かい所の説明はなしとさせていただきます。


軍隊を持つ理由は国によって理由は様々ですが、大体どこの国も理由は一致しています。その理由を説明するためにもここからは、仮想的に実際には無い国家を例として挙げますが、全ての国がそれに当てはまるとは限りません。

国家同士の外交というペンを交えた戦争

国家同士の外交というペンを交えた戦争

国家というのは国を豊かにしていかなくてはいけません。国民の生活を豊かにしたり、国家を維持していくためにも、資源や利権というのを持とうとします。しかし、当然ながら自国以外にもこれらを他国も欲しがります。

ここで自国と他国で求めている資源や利権が重なれば、国同士の摩擦が起こります。そこで、国同士の大きくなっていく摩擦を放っておかないためにも、国同士が交渉をします。「◯◯を許しますが、その代わり◯◯をくれ」「◯◯をさせてくれ」「あなたの国は◯◯をしないでください」など国同士がそれぞれの主張をして、お互いが納得できるように、それらの落とし所を決めます。これが外交です。

しかし、国同士がそれぞれの主張をしあっても、お互いに譲れないものが必ず出てきます。そこで、それぞれの国は自分の主義主張を通すためにも、外交カードというものを使います。(実際にそういうカードがあるわけではありません)

外交カードとは、相手の国から利権などを譲渡させるための有効な話題や手段のことです。少し難しく書いてますが、簡単に言えば「私の言うこと聞きますよね?さもなければ◯◯しますよ」などのようなことを言い、「あなたの言うことを聞きます」と相手に言わせるための手段のことです。ハッキリ言って物によっては、脅しと言ってもいいかもしれません。

これらの外交カードが強かったり多かったりする国ほど自分の主張を通すことができます。

これは個人同士の実生活でも同じことが言えるかもしれません。何もない無い人の言うことを聞く人はいません。日常で人同士が関わる時、「◯◯してくれ、代わり◯◯してあげる」という小さな交渉のようなものを無意識に人はやっています。

会社の中でも親会社や上司の言うことを聞いたり、取引先の顧客の言うことを聞くように、お金という利益を得るためにも人はそれを行います。全てとは言わなくとも人同士の関わり合いで何かを頼まれた時に、自分に利益が無いようなことをする人はいません。(友達同士といえば、お互いの友情が深まるという利益があるからこそ、友達に何かをしてあげるように)

 

具体的な外交カードとは

外交カードにはどのようなものがあるのでしょうか。話を上記の例に戻します。外交カードと言ってもいろいろありますが、一つの例としては以下のようなものがあります。

「◯◯させてくれないと、あなたの国の◯◯を買わない(輸入しない)」だったり、「◯◯させてくれないと、あなたの国には◯◯を売らない(輸出しない)」「◯◯に関税をかけるぞ」などがあります。いわゆる経済制裁というものです。

当然、経済力がある国が自国より経済力がない国に対してできることです。こういったことをちらつかさられれば、経済制裁をされたくないためにも、相手の要求に応じたり、相手へ利権を譲渡したりします。

しかし、この経済制裁という外交カードよりも、強くなる外交カードがあります。

軍事力という強力な外交カード

今回のテーマの主題でもありますが、もう一つの強力な外交カードとして、軍事力があります。軍事力、つまりは軍隊を持つことによって生まれるメリットは何か。これはずばり外交が優位になるからです。

国家が軍隊を持つことによって、外交の場では「◯◯しなければ、あなたの国にミサイルを打ち込む」「◯◯しなければ、あなたの国を侵略をするぞ」と言ったことをチラつかせることによって、外交を優位に持ち込むことができます。軍事力が乏しい国というのは、相手の要求をしぶしぶ呑んでいくしかありません。

外交のたびに相手の国の要求に応じ続け、相手の国のマイナスな面や、自国に不利なことなどを全部押し付けられ、自国には何の利権や資源なども持てなくなっていけばどうなるでしょうか。

国の国力はどんどん衰退していきます。国が衰退すれば失業率の増加や税金の高騰により、国民の生活水準は下がり、飢えや飢餓増え、治安の悪化なども招きます。

「◯◯しなければ、あなたの国にミサイルを打ち込む」「◯◯しなければ、あなたの国を侵略をするぞ」などをチラつかせるような言ってきたとしても、自国に軍事力があれば、相手を優位に立たせないことも可能です。「戦争を仕掛けてくれば、あなたの国にも被害を受ける」「こちらにもあなたの国にミサイルを打ち込む」などをチラつかせれば、相手の主張も弱まっていきます。「戦争を仕掛ければ、こちらも受ける損失はでかいな」と相手に思わせるためにも、軍隊の存在は有効です。 

このように軍事力とは、外交交渉を優位に立つために存在します。軍隊があるからといって、戦争をするかどうかは本質的には関係ありません。[ローマ人の物語]で有名な塩野七生の有名な言葉として、以下のようなものがあります。

「戦争は、武器を使ってやる外交であり、外交は、武器を使わないでやる戦争である」

戦争とはあくまでも外交の延長であり、手段でしかないということでもあります。

軍隊がなかったことによって不利な条約を結ばれた国

軍隊がなかったことによって不利な条約を結ばれた国

近代的な軍隊が無かったことによって不利な条約をなくなく呑んでしまった国があります。それは日本です。学校の歴史の授業で習うあの有名な、幕末の黒船の来航です。

1854年にペリー率いる黒船の来航により、日米和親条約を結びます。その内容は、下田と函館に港を開き、下田にアメリカの領事館を置くことでした。

後の4年後の1858年にタウゼント・ハリスと日米修好通商条約を結びます。

  • アメリカの領事裁判権を認める。
  • 日本に関税自主権が無い。
  • 片務的最恵国待遇(他の外国よりもアメリカに最も恵まれた条件の関係を与えること)

これらは日本側には圧倒的に不利な条件です。当時の幕府は圧倒的な黒船の大砲の威力と姿からなくなく要求を呑むしかありませんでした。ここから近代国家としての重要性が問われ、明治維新へと繋がり始めます。後に日本は陸軍と海軍を持つようになります。

軍隊がない国には重要なものを任せてもらえない

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上記では利権や資源などのため、強力な外交カードになるため軍隊は必要と書きましたが、もう一つ重要な理由としては、外国侵略に対して自分の国を守ることができないと国は経済的な関係を結びたいとは思われません。つまりは信用されていないということでもあります。

明日になればどこかの国に侵略されるような国に対して、出資したりなどの経済の関係を結びたいとは思われません。なぜなら明日になれば出資したそのお金や、人材、技術が外国侵略にあえば、全て水の泡になるかもしれないからです。どうせなら自国を国防できて、安全な国に対して出資したり、人材を派遣したり、経済関係を結びたいと思われるものです。