わかりやすい安全保障・軍事入門

ニュースなどで聞くけど難しいと感じる軍事や防衛、安全保障などについて入門者向けにわかりやすく解説していきます。たまに軍事のマニアックなネタや軍事に関する歴史なども解説。

ヨーロッパの安全保障体制である「北大西洋条約機構(NATO)」とは何か?

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少し前に「集団的自衛権」の話題がニュースでも話題になりましたが、ヨーロッパにはそれを前提とした同盟があります。

2014年に起きたロシアによるクリミア併合、ウクライナ東部の情勢などで、NATO(北大西洋条約機構)という言葉をニュースで聞いたことがあると思います。

NATO(北大西洋条約機構)は、出来た当初は「東西冷戦」によって生まれたものですが、冷戦が終わった現在でもヨーロッパの安全保障を考える上では、非常に大事なものです。

今回はNATO(北大西洋条約機構)について概要を少し解説したいと思います。

北大西洋条約機構(NATO)とは?

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出典:blue.ap.teacup.com

NATOとは「North Atlantic Treaty Organization」の略であり、アメリカを中心としたアメリカ・カナダの北アメリカとヨーロッパ諸国で結成された軍事同盟のことをいいます。

「集団防衛」、「危機管理」、「協調的安全保障」の3つを中心的任務としています。

 

少し難しい3つの言葉が出たので簡単に言えば、NATO加盟国に対して攻撃があった場合、NATO全体への攻撃とみなして、NATO全体が参戦・応戦を行うというものです。

ヨーロッパの集団安全保障を行うための組織でもあり、NATOはアメリカも交えたヨーロッパ同盟軍とも言っても良いぐらいです。

他にもヨーロッパ周辺の紛争の鎮圧とその後の治安維持、ヨーロッパに対するテロ攻撃による加盟国同士の捜査協力や対処などをしています。

本部はベルギーのブリュッセルにあり、第二次世界大戦後の1949年にイギリス・フランスを中心としてアメリカを加えた12ヶ国で最初は始まりでしたが、現在の加盟国は28ヶ国です。

NATOはどのようにして生まれたのか?その経緯とは

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出典:http://vignette4.wikia.nocookie.net/

第二次世界大戦が終結すると、共産主義体制であるソ連(ソビエト連邦)の影響がヨーロッパで拡大していきます。

共産主義体制であるソ連は、資本主義体制であるアメリカと対立すると、世界の覇権を争う東側と西側で分かれる東西冷戦が始まります。(東側がソ連、西側がアメリカ)

既に東ヨーロッパを影響下に加えていたソ連の脅威を感じ、東西冷戦の激しさが増していくと、イギリスとフランスを主体としてアメリカを加えた北大西洋条約というものが1949年の4月4日に誕生しました。(アメリカを加えた12ヶ国が加盟)

その目的はイギリスの初代事務総長の発言にある通り、「アメリカを引き込み、ロシアを締め出し、ドイツを抑えこむ」というものでした。

つまりは、アメリカという強力な味方を引き込むことで、ロシアの影響拡大を阻止する。もうひとつは、ナチス・ドイツが生まれてしまったように、ドイツの再軍事の強国化をさせないというものでした。

NATO加盟国以外の脅威に対しての軍事同盟の意味を持つだけでなく、NATO内の秩序を維時するための集団的安全保障体制の意味も持っています。

1955年にはドイツ(西ドイツ)も加盟すると、NATOに対抗するためにソ連ワルシャワ条約に基づいた東側諸国の同盟であるワルシャワ条約機構を作ります。

 

この二国間同盟の間には、お互いに中距離弾道ミサイルを東側諸国と西側諸国の境目に配備したり、NATO間での航空機の共同開発などが増えました。

NATOは世界の今までにない軍事同盟であり、統合部隊を作ったり、武器や装備などの互換性を進めました。

東西冷戦終結後のNATOの存在意義とは?

1991年にソ連が崩壊して東西冷戦が集結すると、ソ連の影響下を脱したい東ヨーロッパの諸国からのNATO加盟の申請が相次ぎました。

新たに掲げた「新戦略概念」

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出典:http://www.investwithalex.com/

元々、ソ連に対抗するために作った軍事同盟であるNATOは、新たな存在意義を求められるようになりました。

そして、1991年に「新戦略概念」というものを策定します。それは新たな脅威対象として、ヨーロッパ周辺の紛争地域を挙げました。

それはヨーロッパ周辺の紛争の鎮圧と、その地域の治安維持、そしてヨーロッパ全体のテロへ対する協力体制を作っていくことです。

ヨーロッパ周辺紛争への介入

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実際に行った、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の内戦への介入、コソボ紛争などの介入をしています。これによりNATOは、停戦監視などの任務を遂行して地域の安定化を努めました。

他にもアフガニスタン紛争にも介入しており、最近では2011年のリビア内戦にも加入したことにより、カダフィ政権を打倒する要因にもなりました。

現在の目的は、国際貢献と地域安定化が主な目的となっています。

「新たな冷戦」と「新たな脅威」

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また、東西冷戦が終結したとはいえ、NATOとロシアとの軍事的な緊張関係は現在でもあります。そのため、今でもNATOにとってはロシアは脅威でもあります。

ロシアのプーチン大統領は大国の威信の復権を狙っており、NATO諸国と現在でも対立しています。これは新たな冷戦を迎えているとも言えます。

2014年のウクライナ危機の「クリミア併合」の問題により、EUとアメリカはロシアに対して経済制裁をしており、以前よりもロシアとNATOの対立関係は深まっています。

 

他にもヨーロッパが抱えている問題として、ISISなどのイスラム系テロ組織の脅威、イスラム系難民などの「新たな脅威」の問題もあります。

日本とNATOとの関わり

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出典:http://www.mofa.go.jp/

日本はNATOには加盟していませんが、NATOからは「世界におけるパートナー」のパートナー国家として認定されています。そのため、オブザーバー国家としての参加は認められているため、日本は実質的にはNATOと同盟関係を結んでいます。

 

そのため、日本・NATO国別パートナーシップ協力関係(IPCP)に基づく軍事訓練への参加を日本の自衛隊が認められています。

NATOの演習に自衛隊がオブザーバーとして派遣されたり、過去にはNATOの戦車射撃競技会に自衛隊90式戦車が参加したこともあり、圧倒的な命中精度を見せて優勝の経験もあります。

また自衛隊が使用している装備類はNATO規格に沿ったものであり、NATO加盟国に対して、弾薬や武器の融通なども行えるようにしています。

他にもソマリア沖にあるアデン湾で海賊対処活動を各国の軍は行っています。

自衛隊NATOも同様に活動しており、日本はP-3C哨戒機を送って、上空で海賊などの不審な船舶を見つけると、それを各国の軍やNATO軍に対して情報を送るなどの任務を行っています。

 

 

今回はNATOの簡単な概要を解説しましたが、NATOはヨーロッパの軍事同盟であると共に、ヨーロッパ内の秩序の安定を図っている組織でもあります。

次回はNATOにある組織構造などについて触れていこうと考えています。

 

参考資料

北大西洋条約機構(NATO) | 外務省

北大西洋条約機構NATO軍とは?即応部隊,加盟国,軍事力,ロシア,弾? | 海洋国防記