わかりやすい安全保障・軍事入門

ニュースなどで聞くけど難しいと感じる軍事や防衛、安全保障などについて入門者向けにわかりやすく解説していきます。たまに軍事のマニアックなネタや軍事に関する歴史なども解説。

「潜水艦」の強みは何か。強みを活かした「潜水艦」の役割とは

「潜水艦」の強みは何か。強みを活かした「潜水艦」の役割とは

「潜水艦」とはご存知の方も多いと思いますが、水中を潜航できる船舶のことを指します。

今では、ほとんどの国の海軍が潜水艦を保有しており、どこの国の海軍も潜水艦の存在は戦略として非常に重要とされています。

潜水艦が一番最初にできたのは、以外にも古く1620年にオランダ人の発明家コルネリウス・ドレベルによって発明されました。

第一次世界大戦で、ドイツ帝国が実戦に投入したことから、そこでの活躍により、世界中で研究と開発が進みました。

今回は兵器解説の中で、「潜水艦」をテーマに概要とその任務内容を解説します。

究極のステルス機である潜水艦

潜水艦の最大の特徴は、「究極のステルス機」とも呼ばれるほどのステルス性(隠密性)です。

潜水艦は水上艦とは違い、水中を航行しているため、敵からは目視(目で見る)されることはありません。

何より、水中ではレーダーなどの電波や可視光線がほとんど届かないため、発見が非常に困難なことにあります。唯一の潜水艦を発見する方法は、水中に伝播している音などを拾い、わずかなスクリュー音や機関音などを頼りに探すしかありません。探知装置などが発達して現代の科学力を持ってしても容易ではありません。

このステルス性により、自らの存在を気づかれることなく、敵哨戒網の突破や敵艦艇が

制している地域での活動が可能になります。 

潜水艦の凄さを知るのに、こんなエピソードがあります。

アメリカで軍事や諜報活動などの作品を執筆した有名な小説家「トム・クランシー」は、アルゼンチン軍がフォークランド諸島を占領した直後の日に、アルゼンチン海軍の潜水艦士官と一緒に昼食をとっていました。会話の中で「イギリス海軍は、紛争海域に我が方の潜水艦一隻が既に到着していると宣言するはずだ」と言いました。しかし、その士官はその後に「それは事実ではないが」と言ったそうです。

その理由として、以下のように語ったそうです。

「しかし、潜水艦がその海域にいることがはっきりするのは、自軍の艦艇が実際に姿を消し始めたときであり、これは真偽を確かめる手段としてはずいぶん高くつく」

潜水艦とは、見えない敵であり、水上を航行している艦船にとっては、「どこかにいるかもしれない」という心理的圧力により、敵にとっては恐怖心になるということです。

つまり強力な潜水艦を持つ海軍というのは、水上を航行している他の海軍からすれば、それだけ脅威であり、それが強い抑止力を生むということにもなります。

 

潜水艦の役割 任務内容

潜水艦の役割 任務内容

潜水艦はこのステルス性を活かして、海軍ではあらゆる役割を担っています。各国によって戦略は違うため、潜水艦の任務内容と求められるものは違うものの、主に以下のような役割があります。

待ちぶせ攻撃

基本的な攻撃手段です。潜水艦はステルス性を活かし、敵の艦艇を発見すると、その艦艇が通る場所で待ち伏せをします。後はエンジンを停止してじっと留り、敵からも発見されずらい状態にで、待ちぶせ攻撃で一方的に艦艇を沈めることができます。

通商破壊

「通商破壊」とは、物資や人を乗せた商船や軍の補給艦を破壊することです。これによって物資の輸送を妨害することにより、敵の補給路を絶つことにもなります。

海洋国にとっては輸送は海か空しかないため、これをやられれば、物資が全く補給できません。戦時中、日本はアメリカにこれで苦しめられ、同じ海洋国であるイギリスもドイツに商船や補給艦を何度も沈められています。

自国周辺海域での哨戒任務

自国周辺を敵が艦艇が来ないどうか見張ることをいいます。水上に艦艇がいなかったとしても、上記で述べたように、敵にとって潜水艦の存在は「どこかにいるかもしれない」という恐怖を生みます。敵の海域に侵入すようとするのをためらいます。

敵港湾基地に侵入しての偵察任務

ステルス性を活かすことにより、敵の勢力下で情報収集を行うことができます。

制海権下での機雷敷設

「機雷」とは、水中に設置されて艦船が接近又は接触した際に、自動で爆発する海の地雷のことをいいます。「潜水艦」はステルス性を活かして、見つからずに敵の通る海域などに「機雷」をバラまくことができます。

敵勢力下での物資運搬

ステルス性を活かすことで、敵勢力下にいる味方などに食料や兵器などの物資を運搬することができます。

特殊部隊揚陸

上記同様に敵勢力下に少数で潜入する「特殊部隊」を運ぶ際に、敵に発見されずらい潜水艦は非常に役立ちます。

潜水艦の弱点

いくら「究極のステルス」と呼ばれている潜水艦でも弱点が無いわけではありません。

潜水艦の弱点は、目が見えないことです。潜水艦は全体を鉄で覆われているため、窓はありません。周りの音を頼りに水中を進んでいます。唯一の目は、潜水中に水上を見渡すための「潜望鏡」というものだけです。

もう一つの弱点は発見されれば、対処がしずらいことです。潜水艦の強みとは、「見つかりにくい」ことであって、見つかれば鈍足である潜水艦は逃げようがなく、「鉄の棺桶」と化してしまいます。

現代では艦船だけでなく、航空機から潜水艦を見つける技術が発達してきています。それも、潜水中であっても見つける技術があります。(潜水艦を発見する技術については別記事で紹介したいと思います)圧倒的なスピードを持ち、空から全体を見渡す航空機にもし見つかれば、ひとたまりもありません。

そのため、潜水艦は見つからないことに最大限に心がけています。

 

 

今回は「潜水艦」の基本的な概要を説明しました。今後は、潜水艦に使われている技術や細かい分野を紹介する記事を上げていきます。

特に日本にとっては、潜水艦は非常に重要であり、安全保障からの視点での記事を上げていこうと思います。

 

参考資料

submarine-info.com