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わかりやすい安全保障・軍事入門

ニュースなどで聞くけど難しいと感じる軍事や防衛、安全保障などについて入門者向けにわかりやすく解説していきます。たまに軍事のマニアックなネタや軍事に関する歴史なども解説。

「後方支援」だからと軽視してはいけない。戦場における「兵站」の重要性とは?

軍事学

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軍隊と言ったら、戦車、ヘリコプター、戦闘機、歩兵、戦車や特科などの砲撃や射撃などといった戦闘部隊ばかり思い浮かべるかもしれませんが、軍隊が持つの能力はそれだけではありません。軍隊にあるのは、銃の使い方の技術、強力な兵器の使い方など、直接的な戦う能力だけではありません。軍隊が継続的に戦闘を行うには、それらを支援する能力が必ず必要不可欠になります。

直接戦う兵士達に最適な戦いやすい環境を用意し、それらを計画したり支援をする能力。これらを「兵站」と呼びます。

タイトルに「後方支援だから」と、”だから”を付けてしまいましたが、軍事をあまり知らない人達には、「直接戦わないのに何のためにいるの?」と考える人もいます。

今回はそういう人のために「直接戦わない兵士」の重要性をテーマに、少し概要を解説したいと思います。 

「兵站」とは何か?なぜ必要なのか?

「兵站」とは「直接の戦闘行為以外を全て担当する役目」を指します。英語では、「logistics」と呼びます。

具体的な例を挙げるなら、「物資の配給」、「物資の整備」、「兵士の治療(衛生)」、「兵士の給養」、「施設の建築」などをいいます。

他にも「戦場の必要な情報資料の獲得や偵察」、「部隊の適切な編成」、「備蓄管理」なども含まれ、現在ではITなどの「情報管理」なども含まれます。

正確には「兵站」と「後方支援」は違います。「兵站」の中に、「戦闘支援」と「後方支援」というのがありますが、自衛隊ではあまり統一されていない事情があるため、ここでの定義は「直接の戦闘行為以外を全て担当する役目」とします。

 

「兵站」はなぜ必要なのでしょうか?まず軍隊の目的は、「戦う」ことが一番の目的です。

しかし、その「戦う」ためには準備をしなければいけません。軍隊の行う「戦闘」というものには、ただ一度ですぐに終わるものではありません。一度だけ戦って終わるのは、ただのケンカでしかありません。

戦闘というのは準備が必要であり、行えば必ず長期化をします。戦闘を維持し、継続する能力が必要になります。

維持・継続とはどういうことか?以下に具体的な例を挙げれていきます。

 

戦場に必要な物資を用意する(補給)

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出典:https://www.army.mil/article/108798

戦闘では兵士は必ず消耗していきます。人間であれば、当然必ず空腹になります。兵士は空腹を満たしてこそ、戦場で力を発揮します。そのためにも、ご飯を作ったり、水を用意したり、寝床を用意する人間が部隊が必要になります。

他にも兵器の燃料や弾薬を用意したり、衣服を用意しなければいけません。

戦場の銃や兵器を直したり、部品の交換をする(整備)

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出典:http://archive.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=52823

戦闘で銃や兵器類を使っていれば必ず消耗します。消耗して、戦っている最中に不具合などを起こして動かなくなるなんてことになれば、負けてしまいます。そのためにも、銃や兵器類を修理したり、整備する部隊が必要です。

戦場に必要な物資を運ぶ(輸送)

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上記の補給で用意した物資や、整備に必要なパーツなどを戦闘を継続することはできません。他にも前線で兵士がずっと戦っていれば、体力を消耗していきますので、その戦闘を維持するための人員を交換しなければいけません。そのためにも、弾薬や燃料、部品といった物資や、交換のための人員を戦場に輸送する部隊が必要です。

戦場での負傷者の治療(衛生)

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出典:https://www.navy.com/careers/healthcare/medical-support.html#ft-key-responsibilities

戦闘を行っていれば必ず負傷者が出ます。怪我だけでなく、その土地の風土病など、それらを治療する部隊が必要です。

他の後方支援の種類

他にも以下のような「後方支援」があります。国によってはそれぞれ、「後方支援」の区分が違うこともあります。

  • 工兵 - 施設の建設や障害物の敷設など。
  • 警務・憲兵 - 軍隊の警察で、捜査権限を持ち、軍隊内の秩序の維持を務める。
  • 会計 - 文字通り軍隊内の給与などの会計を担当。
  • 軍楽隊 - 軍隊の音楽隊。隊員の士気高揚、広報活動、他国の要人が来た際の儀式の演奏
  • 通信 - 部隊官の通信網の構築など。
  • 情報 - 軍隊内の機密情報の防諜や、他国の軍隊の諜報活動など
  • 広報 - 国外や国内向けの広報宣伝活動。国によっては音楽隊もこれに含まれる。
  • 人事 - 教育計画、昇進、人員配置などといった人事。

「兵站」を行う人が民間人では駄目な理由

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出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%B5%E7%AB%99

上記の内容を見て、「民間人でもできるのでは?わざわざ兵士が行う意味とは?」と思う人もいるかもしれません。技量的には民間人でもできるでしょう。むしろ民間人に出向してもらって、技術を教わっていたりもしますが、兵士が行うことにちゃんと意味があります。

危険な戦場で支援を行えるようにするため

「兵站」の支援を任務を行うのは、場所は戦場であり、兵士に対してになります。支援を行う派遣先(駐屯)や基地などに、急に敵が現れて襲撃されるなんてこともあるかもしれません。

いくら「直接戦わない兵士」といっても、最低限の戦闘の訓練は行っています。そういった危機的に陥るかもしれない状況で支援を行うためにも、兵士が支援を行わなければいけません。

迅速に支援を行うため

軍隊の兵士というのは、規律というものがあり、命令によって素早い行動が求められます。民間人ではなく、兵士だからこそ作戦の支援を行いやすくなります。

自己完結性を持つため

軍隊の特徴には「自己完結性」というものがあります。

それは作戦行動を行うのに必要なインフラ類を自分達で用意する能力のことです。上記で挙げた食糧、発電施設、通信などは軍事施設では常に維持・保管されています。

戦争での、こういったインフラが敵に破壊されることや、インフラが無い地域での行動を想定するためにも、できる限りは自分達で全部用意したり準備する能力が必要になります。

この軍隊の持つ「自己完結性」は、自然災害などが起きた際の支援などにも役立ちます。

「兵站」ができた経緯と歴史

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出典:https://thedigitalcitadel.wordpress.com/military-logistics/

「兵站」ができた経緯についても少し歴史を触れます。

中世ヨーロッパでの食糧の確保といった補給は、現地での局地的な調達がほどんどでした。その方法は敵地での略奪や市場での調達などです。

後に17世紀から18世紀に入ると、銃火器の登場による軍事革命などにより、常備軍などが作られ、近代の軍の組織形態がこの頃から生まれていきます。

戦場で行動する軍隊の規模の拡大や、弾薬を消耗する銃火器の普及により、この頃から「兵站」の概念が確立されていきます。フランス軍はしばしば都市や農村に宿営し、食糧が安定的に補給できるようにしました。他にも、各部隊は4日分の食糧を備えて移動する補給部隊を組織します。

産業革命後は、大砲の火力の増大や、他にも軍需品の生産手段に革新をもたらしました。

従来では軍馬による輸送が、鉄道による輸送に代わり、大規模な戦力の動員や補給が可能になりました。

第一次世界大戦後の教訓では自動車輸送が有用性を示し、各国の軍隊に「兵站部門」の専門家が進みました。後に第二次世界大戦で、海上輸送や航空輸送が行われ、兵站を管理するために、オペレーションズ・リサーチなどの科学的管理や数理的導入の方法が進みました。

アメリカ軍が強力だった理由の一つとしては、大量の物資を戦場に輸送し、こういった「兵站」を重要視していたことにもありました。逆に日本軍は兵站を軽視していたとも言われ、補給が困難な状況が続き、大量の餓死者をだした有名なインパール作戦などがあります。

 

今回は「兵站」について軽く概要に触れました。「兵站」があることによって軍隊は戦闘を継続して行うことができます。しかし、最近では一部は民間へのアウトソーシングもあるそうです。

今後は、「兵站」の内容を掘り下げた記事を別に投稿していきます。

参考資料

軍事入門/兵站の意義と概算 - Wikibooks

militarywardiplomacy.blogspot.jp

repmart.jp

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